キャロル (河出文庫 ハ 2-12)

  • 河出書房新社 (2015年12月8日発売)
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本棚登録 : 928
感想 : 87
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クリスマス商戦の忙しいデパートでアルバイトをするテレーズが、美しいキャロルに出逢い、強く惹かれ恋をする。

ミステリー作家として有名なパトリシア・ハイスミスが描く恋愛小説。
こういった作品も残していたのだなと意外でもあるが、こういう恋愛小説も悪くないと思う。

この作品が単なる恋愛小説でないのは恋愛をするのが男女でなくふたりの女性であること、レズビアンを扱う小説だというところだ。
正直に言うと、わたしの周りにはレズビアンを公言するひとがいないため、それなりに偏見を持っている。
レズビアン小説と知っていてパトリシア・ハイスミスの作品でなければ多分読むことはなかったのではないだろうか。
この作品は発表当時はハイスミスの名前ではなかったらしいので、現在こうしてハイスミス作品として発売されたためそこそこ偏見を持つわたしという読者にも読まれることになった。そして、読むことにより少しではあっても偏見がなくなる。
本って素晴らしい。

恋愛小説、それもレズビアンとなると面白おかしく過剰なまでにセックスシーンが書かれてポルノみたいな仕上がりになっていたら嫌だなと思いながら読んだのだけれど、そういうことは無かった。
ハイスミス自身がレズビアンであるためか、テレーズの心の動きを中心に描かれており、直截な描写は殆どされていない。
わたしのように文章で痴態描写を読むことが苦手なひとでも読めるありがたい一冊だ。

キャロルに出逢い、それまでリチャードという恋人がいたテレーズが本当にひとを愛する気持ちを知り、最終的には成長していく。
ラストは予想と違うものだったが、淀んでしまいそうなレズビアンを扱う小説としては良い終わり方なのかもしれない。

滅多に読まない恋愛小説だけれど、面白く読めた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年4月29日
読了日 : 2016年4月20日
本棚登録日 : 2016年3月19日

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