たまーに出会う、”泣きながら一気に読みました”の類の小説。上巻は1週間と10時間のフライトでコツコツ読んだが、下巻は10時間のフライトで読み終わった。熱にうなされるように。行ったこともないラゴスの太陽や、アメリカ白人のパーティーの様子が、次々と現れては消えていった。
小説家によって短編と長編の得意分野があるとすれば、チママンダ・ンゴズィー・アディーチェ氏は間違いなく長編の方がその魅力を出せるんだと思う。
『なにかが首の周りに』を翻訳文学試食会で教えてもらい、読んでみた時は、おそらく字数的に、「アメリカ人のアフリカ人に対する典型的な見方」に触れたアフリカ人というテーマに絞らざるを得ず、面白いのは面白いんやけど、短編集でそればかりがずらっと並ぶと、すこしばかり食傷気味な気分になってしまった。
アメリカーナでも、恋愛小説ではあるが、米国の人種問題に真正面からぶつかっていて、『なにかが首の周りに』と同じぐらいの(いや、それ以上の)、アメリカ白人に刷り込まれた黒人に対する差別意識が描写されており、また、アフリカ生まれの黒人人とアメリカ生まれの黒人といったような、「黒人」と周りからはひとくくりにされてしまうような集団ごとの意識の違いも描かれている。
この物語は、ナイジェリアで朝のテレビ小説があったらきっと題材にされるようなストーリーである。人種、女性、恋愛、親子、夫婦、親戚、ありとあらゆる人間と人間の関係が描かれ、それぞれの心情描写がとても細かく、登場人物のどれ一人をとっても、リアリティーさに欠ける人がいない。
私は以前開発の仕事に携わっていたが、常々、「開発される側」がどう思っているのか、ということには意識していたつもりだが、実際には、イフェメルの独り言のように考えられていたのかもしれない。
くぼたのぞみ氏の安定的な翻訳も健在で、今度は『パープル・ハイビスカス』を読んでみようと思う。
- 感想投稿日 : 2024年4月16日
- 読了日 : 2024年4月16日
- 本棚登録日 : 2024年4月15日
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