乃木希典 (文春文庫 ふ 12-6)

著者 :
  • 文藝春秋 (2007年8月3日発売)
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感想 : 17
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乃木希典といえば…夏目漱石の『こころ』の中に登場する、『乃木大将夫妻の殉職』という時代背景が印象的で、乃木希典という名前だけはよく覚えていました。


本書が描き出した乃木希典の像は、従来のどの乃木希典とも異なっている。
司馬遼太郎が『坂の上の雲』で書いたような貶められた乃木像ではなく、また誠実で清廉なストイックな気質(実はこのストイシズムには、葛藤がつきものだった)が一人歩きを始めた結果生まれた乃木像とも違う。


著者・福田氏によると、乃木希典の異常なまでのストイシズムには、『立派で有徳な人』であろうとした、乃木自身の使命感のようなものがあったという。

その覚悟たるや並々ならぬモノを感じるが、乃木も人の子だったということだろう。

乃木希典を論考するにあたり、他の偉人との対比により乃木の人格を描く、炙り出しのような手法も大変な見応えがある。

著者は児玉源太郎を有能とし、乃木希典は有能ではなかったが、有徳であると断言している。

ここまでの論考は、なかなかスリリングであるものの非常に分かりやすくて良いと思うのです。


現代にも通ずる所のある乃木に対する幾つかの論考は、非常に分かりやすく読み応えのある一冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2011年8月8日
読了日 : 2011年6月20日
本棚登録日 : 2011年3月3日

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