五重塔 (岩波文庫 緑 12-1)

著者 :
  • 岩波書店 (1994年12月16日発売)
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本棚登録 : 1230
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教科書にも載っている文豪による代表作。文語体で記されているが、文庫本で100ページあまりしかないので読みやすい。一読してまず感じたのは、まるで紙芝居のような作品であるということ。起承転結がハッキリした展開といい、個性的なセリフの掛け合いといい、「読む」というよりは「語る」といったほうがしっくりくる文章だし、名高い暴風雨のシーンも、まるで情景が眼に浮かぶようである。内容は、「のつそり」こと大工・十兵衞が、谷中・感應寺に五重塔が建立されると聞き、師・源太と激論の末にその仕事を勝ち取り、その後紆余曲折ありつつも、一心不乱につくりつづけて完成させるという話である。十兵衞の愚直に仕事に取り組む姿勢が、ただただ美しい。いろいろと衝突してしまうのも、すべては仕事に真剣すぎるゆえ。「のつそり」と呼ばれているほどなので、十兵衞はけっして立派な技術をもった職人でもないし、どちらかといえば醜い存在として書かれている。それでもやはり美しい。「美しい」という言葉がもつ真の意味を、十兵衛はただひたすら大工仕事だけをもって示しているのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年12月30日
読了日 : 2018年12月28日
本棚登録日 : 2018年12月30日

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