ちょっと意表をつく面白さだった。
初めて手にする作家さんの本だったし、何とは無しに書店で手に取った本だっただけに、特に期待して読み始めたわけではないのに、一気に読みきってしまった。
…仕事もほっぽり出して。
ジャンルとしてはミステリなんだと思う。
横浜にある無認可保育園で突如として発声する身代金要求の立て篭もり事件。
富裕層を対象とした保育所に押し入った犯人達の要求は、一人に付き500万円。
子供達と一緒に犯人に拘束される、園長と所員。
そして、それぞれの親達が織り成すそれぞれの「事情」。
一見すると、場面転換もそれほど無く、数時間の間のやり取りだけのお話なんだけれど、とにかくいろんなことが緻密に編みこまれている。
誰もかれもが怪しくて、誰のことも信じなければならない。
あれももしかして伏線だったの?
もしやこれがあそこに繋がるのか?
とにかく読み進めるうちにどんどん深みにはまっていく。
そうかと思うと、よくあるお話では「これは重要」っていうものが、あっさりと切り捨てられて、よい意味で肩透かしを食らわされる。
すごいなぁと思ったのは、事件解決に向けて「○○だからこれが出来るのだった」というようなご都合主義的要素が無いこと。
あれって、お話がしっかりしていればいるほど興醒めするでしょ。
でも、この作品にはそれが無い。
だから、読んでいて「あぁ、なんでそういうことしちゃうのかな!」とか結構ハラハラドキドキイライラする。
涙流すほど感動するとか、読み終わって心に残るとかっていう種類の本ではないんだけれど、ミステリとして、エンタテインメントとしてものすごく面白かった。
残すところ3ヶ月弱の2010年で、暫定1位だな。
- 感想投稿日 : 2010年10月10日
- 読了日 : 2010年10月10日
- 本棚登録日 : 2010年10月7日
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