参謀の昭和史 瀬島龍三 (文春文庫 ほ 4-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (1991年2月9日発売)
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感想 : 28
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出版当時は、瀬島龍三も生存し、著者としては、歴史の真実を語って欲しい、語っていない、隠している、とのトーンに終始している。
ただ、瀬島が他界し、それも叶わない中で、この本を読むと拍子抜けの感にもなる。
瀬島は、相当に意思の強い人物であるからして、墓場まで持っていかざることも多々あったのだろうし、それも理解できる。
(戦中の数々の疑義に対し、おそらく著者が推測していることの大半が真実に近いのだろう)

それを離れ、瀬島がどのような人生を送ってきたのか、特に戦前、戦中、戦後と世の一線に身を置いてきた人物に対して大いに関心がある。それは良い悪いではなく。
陸軍という特殊な集団で、どのように頭角を現してきたのか?、また陸軍の組織の弱みは?

興味深いところは、伊藤忠時代。
よく、戦後の復興、特に企業活動について、陸海軍の組織論が活かされている、と聞くが(それが発射台を高くしていた)、まさに彼が伊藤忠で組織を動かす際に使っていた要諦は陸軍で仕込まれた仕組みだ。

以下抜粋~
・戦争とか騒擾の要因は、歴史をひもとけば三つしかない。思想・宗教、食料・水、そして燃料、このうちのひとつが要因となって戦争は起こる。
・「一人一人に「もっと勇敢にやれ」というようなことは、いうものじゃないんです。組織全体にひとつの勢いをつけるということが大事なんです。勢いさえつければ、人間の心理からしてみんなが最大限に全幅の努力を傾注し能力を発揮するようになるものだと私は信じます」
・「戦術の失敗は戦略で補えるが、戦略の失敗は戦術では補えない」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2022年9月13日
読了日 : 2022年9月13日
本棚登録日 : 2022年9月13日

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