(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2013年6月28日発売)
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【由来】
・前作2つとも面白く読んだので。

【ノート】
・食品、GM種子、製薬会社、農家の隷属とそのグローバリゼーション。「ロボコップ」で描かれていた世界を地でゆくデトロイト、公共サービスの消失、刑務所の労働力化、企業に都合の良い法案を作成するALECというクラブ。

・アメリカはとんでもないことになってる。加えて、国内だけでなく国外においても、例えばパキスタンで無人機が一般市民を巻き込んでターゲットを殺害しているというニュースを聞くと、本当のテロ国家は一体どこなんだという気がしてくる。

・大きな戦争の火種は消えた代わりに、紛争やテロが盛んになった。その一方で、戦争の形態を取らない搾取構造の侵略が始まっている。大規模な戦争で人が死ぬよりはいいのか?その一方で、テクノロジーによって兵士と兵器の管理が可能になり、そうなると戦場の制御が可能になり、そうなると戦争が合理的ビジネスとなり、行き着くところ、戦争が普遍的になる、というのがメタルギアソリッド4で描かれていた世界。

・だが、本書は、単に「アメリカではこんな恐いことになってて、このままだと日本もこうなる」ということを煽っているわけではなく、エピローグでは、市民が、巨大企業に対して、どのように、敵対することなく対抗しているかというエピソードが紹介されている。それを読んでいると、「本気で渡り合う」気持ちを持てるかどうかの問題なのだと感じた。相手は(あえて、敵、とは言わない)プロで、資本主義の原則に立って、利益を最大化するべく本気で取り組んでいる。手段を選ばないが、合法の範囲(法律すら操作して作っちゃうわけだが)。ならば、こちらが、本気で対抗手段を考えて実行できるか。例えば預金額を全て地方の信金に、とか。

・この辺りの話は著者自身が「ラジオ版学問ノススメ」というPodcastでも言及していた。相手は、単なる悪者というわけではない。「情熱と信念を持って」利益を最大化するためにやっているというだけの話で、それに対抗するには、我々も、相手の考え方のパターンや弱点についての研究をして、相手と同等以上のエネルギーを注がなくてはならないということで、果たしてそれは現実問題として可能なのだろうか?その鍵となるのが情報共有・伝達手段としてのネットだったり、体系的なな研究や、アクションプランを企画・立案・実行するNPOのような組織だったりするのかも知れない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2018年10月28日
読了日 : 2013年10月15日
本棚登録日 : 2018年10月28日

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