私、たぶんこれを学生時代に読んだ。気がする。そしてたぶん当時は自分から遠い話だったので、あまり感慨を抱かなかったと思う。こういう、女であることを意識させられる女性主人公のものは苦手だったし。
郁代は確かにどうしようもない母親だけど、突き放すこともできない朋子の気持ちがとても、分かる。
朋子が再三言うように、朋子に子どもができていれば、郁代との関係も変わっていたように思う。郁代が子離れできないのと同様、朋子も親離れできていないのだ。親はいつまでたっても子を子ども扱いするし、家にいれば子はいつまでも親に縛られるものだ…。
母親である美しい郁代に似ない自分を、朋子は恨みがましく思っていたようだけど、父親に似ていると言われたとき朋子はどう思ったのだろう。
郁代が朋子にべったり依存していたのは、一番愛した男に朋子が似ていたからなのだとしたら、夫に早く死なれた郁代もかわいそうな人だ。
いつまでも江崎を未練がましく思っている朋子に重なる。もし江崎にそっくりな子どもが生まれていたら、朋子はどうしていただろう…
生活の上で身に付いた着物の知識がないと書けないだろうな、という描写がなんだか素敵で、今はこういう文章がなかなかないなぁという気がする。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説/ 日本
- 感想投稿日 : 2017年9月4日
- 読了日 : 2017年9月4日
- 本棚登録日 : 2017年8月20日
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