枠組みは学園ミステリぽいが、それではいかにも軽く本作にはそぐわないし、そもそもこれはミステリではない。古代ギリシャ語専攻の浮世離れした6人のゼミ生、ヘンリー、フランシス、チャールズ、カミラ、バニー、そしてリチャードの物語。先4人が集団ヒステリーの事故で地元の男を殺してしまう。たまたま集団からはずれていたバニーがそれを嗅ぎつけて、疑い出す。その口封じのためにヘンリーが主犯となってリチャードを含む他4人の協力で、彼を事故死を装って謀殺するという事件。事件そのものは単純で、最初から読み手にはすべて明かされている。おざなりな捜査はあらぬ方へ向かって発覚をまぬがれるかに思われるのだが、それぞれが疑心暗鬼になって内部崩壊し、悲劇の幕を閉じる。そこへ至るまでのいなかの大学に隔離された高等遊民ともいえるサークルの心理ドラマが本書の主題だろう。ジュディやクロークに代表されるごく普通の大学生たちとの際立った対比から、グループの精神的特殊性が浮き彫りにされ、語り手にゼミの新参メンバーで微妙にずれた立ち位置にいるリチャードを配したところが絶妙だ。頭でっかちの世間知らずの悲劇といえば身もフタもないが、それを見事に肉付けして群像劇に仕立て上げたところが作者の手腕、といったら誉めすぎだろうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
現代小説
- 感想投稿日 : 2023年12月18日
- 読了日 : 2023年12月4日
- 本棚登録日 : 2023年12月18日
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