クルト・ヴァランダーもの2作目。このシリーズ、単なるドンパチではなく明確なテーマが据えられているので社会派警察小説というカテゴリーになるのだろうけど、何といってもヴァランダーの人間としての魅力が秀逸だ。ますます色濃くあらわれる人間的な弱さにとても共感をおぼえる。2作目にしてもはや僚友リードベリが亡くなってしまい、ヴァランダーは自問自答しながら独力での捜査を強いられる。事件は救命ボートで流れ着いた身元不明の射殺死体という発端だが、前作同様表向きの事件は本題ではなく、その根底にあるより巨大な邪悪なものがテーマとなっている。舞台はラトヴィアの首都リガへ飛び、そこでのロシアとの民族問題に巻き込まれてゆく。そうなるともう一介の警察官としての捜査という範疇を超越しているので、後半はもう警察小説というよりはそこまでやるかというミレニアムばりの破天荒なハードボイルド冒険譚のようになっている。これがリスベット・サランダーならもっと安心して見ていられるのだが、クルト・ヴァランダーなので結構ハラハラさせられる。二人の高官のどちらが悪の正体か。最後の最後にそれが明らかになるシーンは非常にスリリングでうまくできている。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外ミステリ
- 感想投稿日 : 2017年2月19日
- 読了日 : 2017年2月12日
- 本棚登録日 : 2017年2月19日
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