トマス・アクィナス 『神学大全』 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社 (2009年11月11日発売)
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感想 : 8
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本書は、哲学・法哲学を専門とし

現在は長崎純心大学教授である著者が、

『神学大全』を独自の視点から解説する著作です。


中世最大の哲学者であるトマス・アクィナスとその主著『神学大全』。

511の問いと、それにに対する回答からなる本書について

著者は、創造論のように神学上の重要な論点に加え

幸福の意義、悪の存在、そして共通善など

現在を生きる我々にとっても重要な論点に注目し、読み解きます。


安易な妥協に落ち着くことなく

徹底して思考し続けるトマスの姿に

時として、著者自身が戸惑いながらも

文理的整合性と、内容上の妥当性を兼ね備えた解釈を展開。


善と悪の不可分な関係、正義と愛の峻別論

などどの記述も興味深く

本書をきっかけにもう一度深く学んでみたいと思いました。

なかでも興味深かったのは

三位一体論と関連付け論じる「神の存在」論です。

我々が前提とする、近代的な人格=ペルソナ論とはまったく異なる理論は、

キチンと理解できているのか怪しいのですが、

「人格」を多面的に理解する手がかりにしたいと思いました。


神学や倫理学はもちろん、

法哲学、政治思想、経済思想など

幅広い領域に根強い影響を与え続けるトマス。

その思想を振り返るとともに

我々の思考のあり方をもう一度根底から問い直す本書。


トマスに興味がある方に限らず、

物事をより深く考えたい方には強くおススメしたい著作です。

読書状況:積読 公開設定:公開
カテゴリ: 西洋思想・中世
感想投稿日 : 2010年6月27日
本棚登録日 : 2010年6月27日

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