黒部の山賊 新版

著者 :
  • ブルーガイドセンター (1994年8月1日発売)
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本棚登録 : 40
感想 : 7
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 小学五年の時、黒部五郎から三俣蓮華への縦走をやりまして(逆だったかも)、そのとき、三俣蓮華の山小屋で著者のかたから購入しました。持っているのは古いほうなのですが、こっちを登録。
(このとき、下山途中に台風の影響をくらって、風速30mの嵐の中、13時間歩き続けたことは軽いトラウマになっています。雨って下から吹き上げてくるなら合羽なんて意味ないし、合羽の袖はもぎ取られて飛んで行ってしまうし、でも、一番衝撃だったのは、下山したら快晴だったこと。台風はまだ九州の海上にいたんだ……尾根道はあんな嵐だったのに! 自然パネぇよ!)

 それはさておき。
 この本に記されていることは、すべて著者が体験した実話です。
 黒部ダムを作るにあたり、山々に「山賊」が住み着いているというので、調査と対策を命じられたこと。
 町の人から聞いた話と、「山賊」側から聞いた話の、立場の違いによる相違点。
「山賊」たちの山の生活、そこで起こる不思議な出来事……などなど。

 私が三俣蓮華の小屋に向かう尾根道を歩いていた時のことでした。
 そのときはまだ天気もよく、消失点まで見通せそうな尾根道を歩いているのは、ウチの家族だけでした。
 少し遅れて歩いていた私は、そのとき確かに背後から「おーい」と誰かが呼ぶ声を聞いたのです。
 振り返っても誰も居ません。私は母親から教えられたとおりに「ヤッホー」と呼び返しました。返事なし。
 空耳かな、と思って歩き出すと、また、「おーい」と聞こえます。
 振り返っても誰も居ない。
 気持ち悪くなって、急いで前の家族に追いつき、「今、誰かの声がしたよね?」と聞いても、そんな声はしなかった、と。

 そう、本の中に、まさにこの、私が体験したこととまったく同じことが書かれていたのです。該当箇所を読んだとき、私の背筋がどんなに冷たくなったことか……!

 不思議なことばかりではなく、「山で暮らすものたち」の心得、体験がみっしりつまっている一冊でもあります。TRPGをプレイするときに、いろいろと参考になりました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 雑学
感想投稿日 : 2011年5月8日
読了日 : 2011年5月8日
本棚登録日 : 2011年5月8日

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