AIの衝撃 人工知能は人類の敵か (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2015年3月19日発売)
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 人工知能の最大の特徴は、人間とコンピュータの強みを足し合わせたところにあります。私たち人間の脳が持つ最大の強みは「何かを学んで成長する能力」です。脳科学の成果を取り入れた「ディープ・ニューラルネット」のような最新鋭のAIは、この学習能力を備えているのです。これは「機械学習」と呼ばれます。(p.6)

 問題を解決するために必要な「何かに気付く」という能力こそ、これまでのAIに欠如していたものです。この限界を突破したことで、ディープラーニングはAIにおける永遠の難問とされてきた「フレーム問題」さえ解決する、との見方も出てきました。(p.120)

 製造業から始まる、このAIロボット化のトレンドは、その川下にあるすべての産業へと波及するはずです。たとえば自動運転車は単に自動車メーカーだけでなく、タクシー業界や運送業界にも計り知れない影響をもたらすでしょう。また軍需産業に端を発するドローン(無人航空機)は、単に運送・宅配業界を変えるのみならず、油田の探索や不動産物件の空撮、映画産業における特撮など無限の応用が考えられます。(p.178)

「とにかく製造業が戻ってくれば、そこに新たな雇用が生まれる」というのが米国政府の基本的な考え方です。たとえば工場の製造ラインの仕事はロボットに任せるにしても、「製品設計」や「工程管理」、さらには「製品の販売」や「マーケティング」など、高付加価値の雇用が新たに創出されると見ているのです。(p.210)

「クリエイティブ担当者にこれ(筆者注・創造的作品)はどうやったのかと訊けば、彼らは少々罪悪感にとらわれる。実際には何もしていないからだ。彼らはただ見ただけだ。見ているうちに彼らにははっきりする。過去の経験をつなぎ合わせ、新しいものを統合することができるからだ。それが可能なのは、彼らがほかの人間より多くの経験をしているから、あるいはほかの人間より自分の経験についてよく考えているからだ」(スティーブ・ジョブズの流儀)(p.235)

「(創造性とは)一見異なる領域に属すると見られる複数の事柄を、一つに結び付ける能力を持った人から生まれる」(アイザック・アシモフ)(p.235)

 ある能力において自分よりもすぐれた存在を創造し、それを受け入れる私たちの先見性と懐の深さです。蒸気機関からコンピュータ、そして産業用ロボットまで、私たち人間はあえて自らの雇用や居場所を犠牲にしてまで、人類全体の生存と繁栄を促す新たな技術を開発し、それを受け入れてきました。これは単なる「知能」という言葉では表現しきれないほど大きな「何か」です。このように将来を見据えることのできる叡智と包容力こそが、私たち人類に残された最後の言葉なのです。(p.242)

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感想投稿日 : 2017年3月20日
読了日 : 2017年3月12日
本棚登録日 : 2017年3月12日

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