このあたりは台風銀座やから台風には慣れっこになっとるけど、台風が熊野灘沖を通るのか、それとも紀伊半島の山中をもしくは紀伊水道あたりを通るのかはいつも気にしとるんです、経験的に熊野灘を台風が通るときは風雨の影響をあまり受けないことを知っとりますから、とTさんは言った。(p.140)
1時間に100ミリを超える雨量というのは想像が付きますか、とTさんに訊ねられて彼はかぶりを振った。気象庁の説明にあったんやが、よくバケツをひっくり返したような雨いうでしょう、あれで30から50ミリの雨量なんやそうです。それで滝のようにゴーゴーと降り続いて、傘がまったく役に立たへんようにナルト50から80未満、そして80ミリを超えると、私も表へ出てみたんやけど、水しぶきで視界も悪くなり、生き苦しくなるような圧迫感があって恐怖を感じましたわ。それに加えて風も吹いて雷もなっていたしねえ。
頷きながら、彼は改めて1時間に100ミリという雨量を考えてみた。それまで天気予報などで耳にしてもきちんと意識してみることはなかったが、降った雨がそのまま貯まったら、1時間で推進10センチになるということだろう。ということは1平方メートルに100ミリの雨が降ったら、水の量は100リットル、重さにして約100キロとなる。その水量がいたるところで高所から低所へと流れ込んでいくときの膨大なエネルギーを彼は想った。(p.141)
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- 感想投稿日 : 2019年9月25日
- 読了日 : 2019年7月22日
- 本棚登録日 : 2019年7月22日
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