日本仏教の社会倫理――「正法」理念から考える (岩波現代全書)

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  • 岩波書店 (2013年9月19日発売)
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 専門でないからか,主張したいことがいまいち理解出来なかった。

 でも,和辻哲郎の「慈悲の道徳」に関する引用は掘り出し物だった。すなわち,念仏宗と「愛の神への絶対帰依たるキリスト教」,禅宗と「さとりを中核とする覚者の教え(仏教)」,法華宗と「コランへの絶対信頼と端的な征服とを特徴とする絶対服従の宗教(イスラム教)」。

 浄土系とキリスト教の類似は前から何となく感じていたけど,既に指摘されていたのは知らなかった。


 もうひとつ。
 「選択本願念仏集」は,末法思想によって絶対他力が生じ,それと同時に正法への回帰は放棄される。世界への認識が頽落的であり,「罪悪生死の凡夫という痛切な自覚を通して,末法思想は時期相応の絶対他力による救済という思想に至りつく」。

 これはまさに宗教的経験の諸相でJamesの指摘したConversionのプロセス。


 教義から社会倫理を述べていたけれど,教義の表面にとらわれずもう少し根本から調査してみたい。どの宗教にも形は違えど同じ倫理を重視している,ということをレヴィ=ストロースみたいに。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2014年7月6日
読了日 : 2014年7月6日
本棚登録日 : 2014年7月6日

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