ネット炎上の研究: 誰があおり、どう対処するのか

  • 勁草書房 (2016年4月22日発売)
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感想 : 35

ほんとうに「年収の多い若い子持ちの男性」が炎上させているのか?
この本が紹介されるときに必ず使われるフレーズだが、数字を見てみたら極めて怪しかった。
炎上参加者は少なく1%程度しかない。著者が見ているのは、その小さい参加率が1つの項目(年収、年齢といった属性)によって有意に変化するかどうかである。0.9%が1.1%になっても有意ならその項目は取り上げるのである。「年収」についてはそのP値が8~9%なのに採用している。2000人のアンケートで、その中で炎上参加者は(多くしてある)数十人しかいない。
「年収の多い若い子持ちの男性」これが本書を語るキーワードとして流通していて、このプロフィールの人が炎上に参加する理由について詳しく語ったレビューもある。だがこの表現はミスリードでないのか。各項目が独立しているのか疑問に感じる。独立しているかどうかはクロス集計をしないとわからないはずである。たとえば、ママ(子育て中の女性)たちが特に「子持ち」の項目を押し上げていないかチェックしたのだろうか。育児ホルモンともいわれるオキシトシンは他社に対しては攻撃性を高めるともいう。

大きな炎上でも参加者は数千人、直接攻撃するのは数十人という分析は有用。「ニコニコはコメント数人ミュートすれば快適になる」「2ちゃんの炎上は数人でやっている、1人の場合も」という報告もあるとか。なので、攻撃者を個別に排除する対策は有効だろう。

炎上の弊害は、自由な意見表明の萎縮であり、その結果炎上に強い両極端な人だけがのこり言論空間が両極化するという。

今のインターネット言論空間は、学術的なネットワークとして誕生したため、発信力が過剰だという。
筆者は非対称SNSを提案している。これが普及しきれば有効だろうが炎上しやすいtwitterのような空間が残っている限り効果はあがらないと思うが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2016年12月1日
読了日 : 2016年11月17日
本棚登録日 : 2016年6月26日

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