風に立つ (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社 (2024年1月10日発売)
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本棚登録 : 1987
感想 : 115
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南部鉄器の職人である父は、仕事一筋で家族思いとは到底言えない昔気質の堅物だと思っていた。
その父が突然、補導委託の引き受け先になると言う。
母は亡くなり、妹は結婚して出て行ってから父との二人暮らしで、そこに問題のある少年を受け入れることが納得できない悟に有無を言わさぬまま、少年春斗が来る。

工房で一緒に働く健司は、若い子が来ること事態が嬉しい様子で、手取り足取り面倒をみる。
あまり喋らず、表情も乏しい春斗が、アルバイトの八重樫が来たときに己を爆発させたことがあったが、やがて落ち着きを取り戻す。


春斗と工房で働き、一緒に暮らすことによって見えてきたものは…。
悟にとっては父の存在が大きく影響していたように思う。
自分にとっては、無関心であった父なのに春斗には笑顔を見せ、寄り添っている。
嫉妬ではないが、何がそうさせたのかがわからないと戸惑っているように思えた。

父が昔話をしたことで、悟にはわかったのではないだろうか。
とても不器用な親子だけれど、その間にひとり少年が入ったことで見えてくるものがあった。
家族だからこそ、近くにいすぎたからこそ伝わらなかったものがあったということに気づいた。


幸せな人生とはなんだろう。
恵まれた人生と充実した人生は違う。
与えられたものと自分が望んで生きる道とは得る価値が違ってくるだろう。
自分の目でしっかりと選んでその道を目指してほしいと願う。





読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2024年2月6日
読了日 : 2024年2月6日
本棚登録日 : 2024年2月6日

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