たった、それだけ

著者 :
  • 双葉社 (2014年11月12日発売)
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感想 : 121
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会社の上司が贈賄に関わっていると知り、明るみに出る前に逃がす浮気相手の女性から物語は始まる。

失踪を知った妻と弟を心配している姉。
帰らない人を待ち続ける妻。
弟のことがわからない、わからなかったということがわかっただけで何もできない姉。
それでも時だけは流れて1人娘も父のことは、わからないまま成長する。

転校を繰り返しながら気づいているのは、母はしあわせにならずに父の帰りを待っている。そうやって無意識のうちに父に復讐している。いつまでも不幸でいることで、永遠に罪の意識を持たせる。
しあわせになった瞬間に、相手をそこに留めておけなくなってしまうとでもいうかのように。もとより相手の気持ちはそこにないのに。

こんなふうに娘に思わせる結果になってもいつかは会えると思っていたのだろうか。
どこまでも強い人なのかもしれない。
娘にしてみれば独りよがりと感じるのだろうが…。
苦しさと刹那のなかに優しさを見たような、弱さや強さも見たような今までにない読後感だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年2月10日
読了日 : 2023年2月10日
本棚登録日 : 2023年2月10日

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