桜花を見た (文春文庫 う 11-7)

著者 :
  • 文藝春秋 (2007年6月8日発売)
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感想 : 15
4

5篇からなるの短編種

《桜花を見た》
太物問屋「いせ辰」の手代、英助は、母親の死に際に「お前のお父っつぁんは、遠山左衛門尉景元様だよ。15になったら、会いに行くんだよ」と、言われたが、18になる今まで、会いに行く勇気がなかった。
それでも、英助は、真面目に奉公に励み、得意先にも、贔屓にされていた。
ある日、「いせ辰」の跡取り息子から、妹のお久美と、世帯を持たないかと、言われる。
お久美は、片足が不自由で、出戻りであった。が、英助は、その縁談を受けるつもりでいたが、お久美は、英助が、無理をしていると思い、「断っても良い」と言う。
英助の誠に触れた、お久美は、英助から、父親の話を聞く。「誰にも知られず、会いたい」という英助の気持ちを知り、「きっと私が会わせてあげる」と、心に決め、びっくりする行動に出る。

《別れ雲》
筆屋の老舗「宝山堂」の一人娘、おれんは、手代卯之吉を婿に迎えた。だが、卯之吉は、親方のやり方に、反発して、借金を作り、行方不明に。父と娘は、手頃な家を見つけ、細々と、筆の商いをしていたが、そんな二人の前に、歌川国直が、客として、現れる。

《酔いもせず》
父葛飾北斎の世話をしながら、陰に隠れて、絵を描く娘のお栄。
女と言うだけで、世に出られない。
お栄は、鬱々と、日々を過ごすが・・。

《夷酋列像》
和人商人との商取引や、労働条件に不満を募らせた一部のアイヌ達が蜂起した、クナシリ、メナシの戦い。その討伐隊の指揮官の一人である蠣崎波響は、松前藩の藩主の弟であり、絵師で、藩の家老であった。
陸奥国伊達郡梁川へ移封された、松前藩の復領の為、波響は、10年以上も、絵を売り、帰封を叶えた。

《シクシピリカ》
高宮元吉は、貧しい農家の長男であったが、学問を志して、家を弟たちに任せ、奉公先で、学問を積んだ後に、師の代理で、蝦夷地見分随行員として、蝦夷地に向かう。

《桜花を見た》で、親子の対面の場面は、流石、宇江佐真理さん。泣かせどころを、心得ておられる。

5篇全てが、実在の人であり、作者の、史実に基づいた、想像が面白く、読み応えがあった。

新しい作品が読めないのが、残念。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年8月1日
読了日 : 2021年8月1日
本棚登録日 : 2021年8月1日

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