白暮のクロニクル (5) (ビッグコミックス)

  • 小学館 (2015年4月30日発売)
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感想 : 23
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 吸血鬼ともいえる長命者、オキナガが現代社会に存在し、厚生労働省が管轄する、という設定の細部を詰めていくと結構いろんなことを考えなければならなくなってくる。そういう思考実験もSFの醍醐味なのだが、本巻ではオキナガの収容施設が舞台だ。長く生きすぎて時代との接点を失ってしまったオキナガに読み書きを教えたりして社会復帰を支援する施設なのだが、食うには困らないしと施設に安住してしまっているオキナガも多い。他方、母がオキナガで、面会者の娘がどんどん老いさらばえていく家庭の描写などの悲劇も描かれる。それゆえ「絶望の楽園」。
 主人公のひとり、厚労省のオキナガ担当の役人・伏木あかりは研修でこの施設・光明苑に出向くが、そこにもうひとりの主人公・少年の風貌の88歳のオキナガ、雪村塊が訪れる。かれは光明苑で60年間目を覚まさない少年を訪ねているのだ。その少年・章太は羊殺しの現場を見ていたかも知れないのだ。ということで章太の存在は今後への布石。デカくて色気のないねーちゃん・あかりと女の子のようにきれいな眠れる森の美女・章太。そういえば、平行してボーイズ・ラブ・マンガ家の話を連載しているんだった、ゆうきまさみは。
 本巻ではあかりと塊の反目が描かれる。反目のあとには相互理解が来るのか。ともあれ、かつての塊の恋人でシリアル・キラー「羊殺し」に殺された棗(なつめ)があかりの祖母だということは、ふたりともまだ知らない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2016年2月14日
読了日 : 2016年2月14日
本棚登録日 : 2016年2月14日

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