2010年、マンションの一室に二人の幼子を、真夏日に何日も閉じ込めたまま外出し餓死させた事件。このルポに書かれていることが本当なら、母親の周りには、誰一人として、幼い子供たちが現在どういう生活をしているか本気で心配する人がいなかったと思われます。人に頼れずに育った情緒不安定なこの母親は、何か得体の知れないやり切れなさから逃れようとするように、家出をしたり嘘をついたりを繰り返す。そのたびに家族は落胆し翻弄されます。「母親」「妻」「娘」としての期待を裏切った彼女に対して「こんなに面倒をみてやったのに」「こんなに親身になってやったのに」という被害者としての処罰感情を持った人ばかり。お前なんかもう知らん、子供を生んだからには母親なんだから子供の面倒をみるのが当たり前とでも言っているように、「しっかり母親をします」と念書まで書かせて、彼女と子供を大海に放してしまいました。裁判の証言で、家族からは「生活に困っていると言ってくれたら助けたのに」という受動的な発言ばかりで「あの時、自分にも何かできたかもしれない」という発言をする者がいないことに、この事件を知った時の数倍も強いショックを受けました。子供を一人では作れないのと同じで、けっして一人では育てられないです。よく言われる「女手一つで育て上げた」というのは誇張だと思います。なんらかの形で周りが助けてくれてたんですよ。どうかこの事件が、何かの導きをもたらせますようにと祈らずにはいられませんでした。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2014年4月3日
- 読了日 : 2014年4月1日
- 本棚登録日 : 2014年4月3日
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