奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 (幻冬舎文庫)

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  • 幻冬舎 (2011年4月12日発売)
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農業という人工的な活動と自然な状態とのバランスの難しさについて考えさせられた。
言われれば当然かもしれないけど、今自分が口にしているほぼすべての農産物は人間が品種改良してきたものであり、それは害虫に弱いなどのデメリットを農薬で克服することを前提として甘くしていたり大きくしていたり収量を高めていたりしている。作物を農薬なしでは生きられなくしてしまっているという点で人工的だ。それが世界の食糧生産の効率を高めて飢餓の回避に貢献していると考えると農薬を安易に否定することはできないが、作物が人間の収穫ターゲットであると同時に微生物や虫とか鳥や動物とか他の植物とかいろんな生き物が構成する生態系の一部でもあるので、その連鎖を歪めるような人工的な活動はサステナブルではないとも思われる。
そのことに、とてつもない苦労の末に実体験を通して気づいた木村さん。絶妙な加減で手を加えることは最小限に抑え、畑の生態系が自然に生きる力を高めることに取り組まれた様子にいろいろ考えさせられた。

りんごや農作物に限らず、人間にも同じことが起きているのではないか。
食べて遊んで人と関わって何かを作って寝て成長する、みたいなサイクルが自然だとすれば、食べることも遊ぶことも買ってこないとできないし、作ることは分業、人と関わることも気乗りしない仕事関係に偏りがち、睡眠は不規則で不足気味、では健全な成長は難しいよなと思う。原始の生き方に戻ればいいということではなく、無理のない自律して自立した生活を送っていきたいなと思った。どこから改善するか道は長いけど、自炊を心がけたり自分で価値が生めるよう仕事を切り替えたりひとつひとつ地に足つけて取り組みたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年12月19日
読了日 : 2023年12月18日
本棚登録日 : 2023年10月19日

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