飛魂

著者 :
  • 講談社 (1998年5月6日発売)
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本棚登録 : 49
感想 : 5
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まさに僕の魂の一冊、人生のバイブル、生涯の愛読書・・・色々言い方はありますが、まあ大体そんな感じです。
一見するとフィクション性の非常に強い作品のようですが、当時大学に入ったばかりの僕にとっては、
不思議とリアルな話のように思えてなりませんでした。僕たちの生きるこの世界とはまったく別の時間が流れ、
異なる価値基準や律やシステムが存在し、紅石、指姫、煙花などの魅力的な名前の登場人物達は、
基本的にはそれに従って学生生活?を送っているのですが、それぞれがまた強烈な個性を持っていて、
時には協調し、時には対立し、僕たちにはとても想像の及ばない悩みに耽ったりしながら、成長?していきます。

殆ど完全なるパラレル・ワールドの世界観なのに、いやむしろであるが故に、
ただの大学での学生生活を綴った本などより、何故か共感を持ててしまうのです。
それは個々の場面というより、文章の展開というか流れのような部分で浮かび上がってくるような。
何度も読み返していますが、まだまだハテナの多い一冊です。

想像がとても追いつかないような世界を想像するということは、容易な作業ではないような気がします。
筆者・多和田葉子氏の底知れぬ才能だからこそ実現できた、至高の物語なのでしょうか。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 最近の純文系
感想投稿日 : 2009年8月18日
本棚登録日 : 2009年8月18日

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