唯川恵が解説を書いている。
「この美しい結末に、涙することのできる自分が嬉しかった。
大丈夫,私はまだ失ってはいない。大切なものを感じる力をちゃんと持っている。
私がこの「冬の伽藍」で感じた感動を、今,読者のみなさんと共有していることをとても光栄に思う。」
うまい。この文章を読んだら,唯川恵の書いたものが読みたくなってしまう。
作家は、他の作家のよいところを見つけた時に,その作家自身も伸びるのかもしれない。違う方向へ進みながらも、別の方向も良いと思えることに自信が涌くのだろう。
「冬の伽藍」は第一部は目をつむって、黙々と読み進み,
第二部の手紙の部分まで辿り着くことが大切。
第二部の手紙が書きたいがために、第一部があったのだということが分かるかもしれない。
第三部になると、友人が主人公に変わる。著者に,壮大な構想があったことが分かる。
文学作品としての出来はいい。読者には、いろいろ必然性を不思議に思う人がいるかもしれない。人を理解するつもりがない人なのではないかと思う。人を自分の都合で判断する人には、本作品の狙いが見えないのだろう。
文学として成功しているかとい観点では、この本がベストだと思わない。技巧としてはベストかもしれない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小池真理子
- 感想投稿日 : 2012年11月5日
- 読了日 : 2012年11月5日
- 本棚登録日 : 2012年11月5日
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