冬の伽藍 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2002年6月14日発売)
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本棚登録 : 433
感想 : 52
5

唯川恵が解説を書いている。
「この美しい結末に、涙することのできる自分が嬉しかった。
 大丈夫,私はまだ失ってはいない。大切なものを感じる力をちゃんと持っている。
 私がこの「冬の伽藍」で感じた感動を、今,読者のみなさんと共有していることをとても光栄に思う。」

うまい。この文章を読んだら,唯川恵の書いたものが読みたくなってしまう。

作家は、他の作家のよいところを見つけた時に,その作家自身も伸びるのかもしれない。違う方向へ進みながらも、別の方向も良いと思えることに自信が涌くのだろう。

「冬の伽藍」は第一部は目をつむって、黙々と読み進み,
第二部の手紙の部分まで辿り着くことが大切。
第二部の手紙が書きたいがために、第一部があったのだということが分かるかもしれない。
第三部になると、友人が主人公に変わる。著者に,壮大な構想があったことが分かる。
文学作品としての出来はいい。読者には、いろいろ必然性を不思議に思う人がいるかもしれない。人を理解するつもりがない人なのではないかと思う。人を自分の都合で判断する人には、本作品の狙いが見えないのだろう。

文学として成功しているかとい観点では、この本がベストだと思わない。技巧としてはベストかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小池真理子
感想投稿日 : 2012年11月5日
読了日 : 2012年11月5日
本棚登録日 : 2012年11月5日

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