大阪生まれの柴崎友香と、大学入学とともに大阪在住となった岸政彦の二人が交互に綴る大阪をめぐるエッセイ。
柴崎パートは大阪で育った具体的な思い出が語られ、大阪の街が柴崎の人間形成に濃厚に影響したことが溢れている。この人の原点は大正区にあり、やがてミナミを包摂するようになり、東京に住む今でもそこから時代と社会を見通している。
自分と同じ人文地理学専攻と知って親近感を抱いた。大阪出身とはいえ自分は郊外の方なので、柴崎の書くことはやや遠い街の出来事である。しかし、大阪の過去が積み重なるのが現在の街だというビジョンに深くうなずけた。
岸の視点はやはりよそから来て面白がっている人のものだ。岸はそのポジションがとても気に入っているのだと思う。生粋の大阪人に憧れて、でもそうではない自分を生きている。
大阪愛に溢れる良い本で、大阪嫌いなんですよね、という人にもぜひ読んでほしい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
評論・NF・雑学他
- 感想投稿日 : 2021年12月8日
- 読了日 : 2021年12月8日
- 本棚登録日 : 2021年12月8日
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