国家は僕らをまもらない―愛と自由の憲法論 (朝日新書 39)

著者 :
  • 朝日新聞社 (2007年4月13日発売)
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 小難しい憲法の理論をビストロのように庶民的にわかりやすく語るという趣旨の本。「憲法は国民が従うべきもの」という誤解を解いている。

 国民主権とか平和主義とか基本的人権の尊重という点は置いといて、勉強になったのは個人主義に関する著者の見解。

 「個人主義が行き過ぎて他者を尊重できない自分勝手な人間が増えた(だから憲法にいろいろな義務を列挙して守らせるべきだ)」というウンザリするほどステレオタイプな意見がよく聞かれるが、個人主義が浸透していないからこそ他者を尊重できないと著者は喝破する。


 これは自分で何とかできないことや面倒なことは他者にお任せ(ここではするという傲慢な「してもらう主義」である。その極致はヒトラーに全権を委任したナチスドイツ。

 あと、「社会の恩恵を受けているのだから、黙ってルールに従え」というのも傲慢である。例えば当書では九州某県の中学校で丸刈り強制の校則が存在した。これが裁判沙汰になった際、「理不尽であっても、ルールである以上従え」という権威主義的とも取れる意見が相次いで新聞の投書で取り挙げられた。

 個人主義にしろ、丸刈り強制にしろ、国民が分かっていないのは「憲法は国民が従うべき法ではなく、国家権力から国民を守るもの」という立憲主義の考え方である。

 『憲法と平和を問いなおす』よりはわかりやすい。内容はそっちの方が充実しているが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2011年6月6日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年6月6日

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