教育は遺伝に勝てるか? (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2023年7月13日発売)
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感想 : 32
4

生きるとはなんだろうか。
自分とはなんだろうか。

これまでいろいろ考えてきたような気もするけれど、整理すると、上記のようなことに収斂させることができるのかもしれない。

最近気になっていることの一つは、遺伝。

自由意志を想定しようとしても、その基礎となる自己を確定しようにも、たどり着くのは受精卵となることを考えると、そんものはない。
という結論に至らざるをえない。

だとすると、残るのは、遺伝、環境・偶然、ということになるのではないか。

だとしても、意志、自由みたいなものをなんらかの形で信じることなく、この人生を歩み続けることはできない。
ように思う。

そうした、疑問にも一定程度、考える手がかりをくれたという意味で、よい本だったように思う。

高校生の頃、理解したつもりの、生物学としての遺伝に関する話。
なんだか理解が面倒で、ほぼ読み飛ばしてしまったのは、怠惰のせいか、退化なのか。
退化でないことを願いたい。


すばらしい新世界が生む格差
本章では育つ社会によって遺伝と環境のあらわれ方が異なるという事例を数多く紹介してきました。そこで見えてきたのは、環境が自由になればなるほど、遺伝的な差がはっきりとあらわれる社会になる可能性があるということです。
え?社会が自由で平等になれば、人々の差がなくなることになるんじゃないの?
そうではなくて、そのときこそ一人ひとりの遺伝的な素質が自由に表現できるようになり、その結果、そこにあらわれるあらゆる差は、遺伝的な個人差が生み出したものになるというわけです。
(中略)
誰にも目由が与えられた「すばらしい新世界」では、とりもなおさず、遺伝的なその人自身があらわされ、個人差が広がることになるのです。それをいま民主的な国で起こっているような分断に陥らせることなく、異なる人々が互いに協力しあう社会をつくるにはどうすればよいのか。子育てについても政治制度についても、環境のあり方を考えるとき、同時に遺伝についてもきちんと理解をする必要があるのです。
P210-212

そもそも個性的であること、何らかの才能を発揮すること、志をもって人生を貫くことをよかれと考えること自体が、一時の流行にすぎません。ボトムラインは、まず生き抜くことです。それすら大事業です。個性や才能や志は、その人の時代と環境で見つかる人もいれば見つからない人もいる。それは遺伝と環境の条件の偶然が生み出す必然です。あなた自身の人生をふり返ってみても、そうだったのではないでしょうか。あなたのお子さんも、きっとその子なりに、その必然を生きていくはずです。
P240

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月26日
読了日 : 2023年12月25日
本棚登録日 : 2023年12月19日

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