藤森照信 21世紀建築魂 ((建築のちから/ LIXIL出版))

  • INAXo (2009年6月30日発売)
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 伊東豊雄、山本理顕、藤森照信の三人が、今、建築が直面している問題を捉え、建築の読み解き方と可能性を探るシリーズ「建築のちから」第一巻。伊東氏は、時代に合わなくなったル・コルビュジェの純粋幾何学に変わる新しい幾何学の構築を、山本氏は、空間の力によって社会を動かす新しいモデルの提案を、それぞれ別の巻でまとめる。第一巻は藤森氏が6人の建築家に対してインタビューを行って建築の読み解き方と可能性をあぶりだそうとしています。

 興味深かったのは、環境に対する建築の可能性を、焼き物の登り窯をヒントに、地球のエネルギーとの呼応することを意識することで見出そうとする視点です。そのほかいろいろと読み解き方のキーワードが示され、自分ならどう考えるかと、しばし読み進めるのをやめて空想したりもしました。

 今回、空想のなかで浮かんだキーワードは「斜面と身体性」「セルフビルド」「地球のエネルギー・水の建材化」「ライフスタイルと建築の幸せな出会い」「都市のカケラとパタンランゲージ」などです。
 21世紀の建築は、単純幾何学やコンセプト、そしてアールヌーボー的な装飾などを建築のよりどころとはせずに、キーワードにあるような、もっと感覚部分の発想を本能的に求めていくような気がします。その感覚を建築に落としこむ編集のセンスや魂こそが、次に出てくる建築家に備わっている資質である。と、この本を通じて伝えたいのではないかと感じました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 極める  専門領域(建築・まち・デザイン)
感想投稿日 : 2010年9月2日
読了日 : 2010年9月2日
本棚登録日 : 2010年8月16日

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