ブルックリン (エクス・リブリス)

  • 白水社 (2012年6月2日発売)
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本棚登録 : 210
感想 : 26
5

なんでこの本をチェックしていたのか忘れたが、チェックしていた当時の俺を褒めたい。とても良い小説だった。

20世紀中盤、不景気で閉塞感のあるアイルランドに生きる若い娘が、アメリカブルックリンに職を得て生活する事になり、ようやくその生活にも慣れ仕事に勉強に充実した毎日を過ごす。そして恋人もできたころにひょんなことから帰省することになる。アメリカ世界で自らも知らない間に洗練された娘は、帰省した地元で人気ものとなり、かつてつれない態度をとられた男前に惚れられる、娘はアメリカに戻るのか?アイルランドに骨を埋めるのか?

というのがあらすじ、なんとも地味な小説なのだが、情景や心理描写が丁寧に書き込まれており、それを読むのが実に楽しいのである。

誠実だが優柔不断なところがある主人公アイリーシュ、彼女の生きる1950年代の閉塞したアイルランドと進取にとんだブルックリン(といってもまだまだ閉塞的ではあるのだが)の情景と、彼女の気持ちが鮮やかに描写されている。非日常的なドラマチックなことなんてほとんど起きてないはずなのに、活字を追う目が離れないのである。

原作の帯には「出発と帰還、愛と喪失、自由意志と義務との間で迫られる残酷な選択をめぐる優しさあふれる物語」とあったというが、まさにそういう小説。出会えてよかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外小説
感想投稿日 : 2017年12月13日
読了日 : 2017年12月13日
本棚登録日 : 2017年12月1日

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