烏百花 白百合の章

著者 :
  • 文藝春秋 (2021年4月26日発売)
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感想 : 105
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八咫烏シリーズ外伝。異世界「山内」を彩る八咫烏たちの、
想い、愛、そして恋を綴るファンタジー短編集。
かれのおとない・・・兄・茂丸の死は家族だけでなく、その親友にも
  深い悲しみを与えた。妹・みよしが雪哉に語る言葉。
ふゆのことら・・・市柳が勁草院へ行くきっかけは、雪哉との出会い。
  郷長の息子の「責任」を知らしめる雪哉の行動が怖い。
ちはやのだんまり・・・結が相思相愛の相手を紹介。千早は黙する。
  が、明留は相手のシンを探り、対峙し、真の姿を知る。
あきのあやぎぬ・・・環が側室になった相手は、西本家の次期当主。
  彼、正室と数多の側室たちの関係とは・・・なんかホッコリ。
おにびさく・・・養父のような腕前は無い。だが養父は彼の良きモノを
  見ていた。鬼火灯籠の「腕比べ」の選者と送り先に驚き。
なつのゆうばえ・・・南本家を取り巻く思惑と陰謀。だが、決して
  一人ではなかった。皇后になるべく生まれ育った夕蟬の思い。
はるのとこやみ・・・音楽が推奨される東領で龍笛を学ぶ双子。
  東家の姫の長琴の技は二人の運命を変える。姫の名は、浮雲。
きんかんをにる・・・書下ろし作品。金柑の甘煮を介して描かれる、
  奈月彦と6歳になった娘、浜木綿、そして雪哉の日々。
  平穏と緊張の中で育つ娘の姿が際立つ。運命の予感?
用語解説、人物紹介有り。
異世界に息づく八咫烏たちの、想いや恋を語る短編集です。
本編では語られられなかった、あの八咫烏たちの、
過去やその後が中心ですが、東西南北の四家や各領の
人々の生活や営みの様子も盛り込まれています。
なんとも大らかな西本家の支える人々、支えられる人々。
というか、真赭の薄と明留の兄って・・・弟妹関係はどうなの?
南本家の思惑と陰謀は、取り巻く環境が影響。だからこその夕蟬。
「あなた、だぁれ?」浮雲の仕草に、娘のあせびが重なる戦慄。
奈月彦の娘から金柑を口に突っ込まれる雪哉の脳裏には、
かつての、己を信じていた頃の奈月彦の姿を重ねたことでしょう。
細やかな短編とは言え、設定の深さを感じられる物語でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー(日本)
感想投稿日 : 2021年6月1日
読了日 : 2021年6月1日
本棚登録日 : 2021年5月7日

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