食堂のおばちゃんシリーズ4冊目。
姑の一子と嫁の二三が切り盛りする、はじめ食堂。
一子は80歳代半ばになり、アルバイトの万里も3年目を迎えた、
この定食屋兼居酒屋での人情話を味わう短編集。
第一話 おせちのローストビーフ・・・年末最終日の人間模様を経て、
迎える正月。おせちを味わいながらの団欒での話題は、着物。
万里が関わった初詣での事件での、ジョリーンの活躍も。
おせちのローストビーフの如く、奇抜もいつか、普通になる。
第二話 福豆の行方・・・鰯の話から生み出される、節分のメニュー。
ショーの話から始まる、メイの恋人について。寿司職人?
メイの部屋でその彼を紹介された万里は違和感を感じる。
その正体を探る、はじめ食堂と常連たち。そして・・・。
第三話 不倫の白酒・・・雛祭には雛あられと白酒のおもてなし。
そんな中、要は人気作家の担当になる。ビビる彼女だが、
姪と来店した彼は気さくな人。だが、店貸し切りで行った
その姪の会社の送別会は不倫発覚の修羅場に。その原因とは。
第四話 ふたりの花見弁当・・・常連の三原が発案した花見は、
他の常連たちも参加し、楽しい宴会になった。桜の景色に
導かれるように思い出すのは、一子も二三も、そして三原も、
過去の花見の風景。想い出が沢山ある。これからも。
第五話 サスペンスなあんみつ・・・常連のダンス教室のパーティーで
始まったゴールデンウイーク。一子と二三は食べ歩きで
過ごす日々を送る。だが、懐かしい店の様子や味の変化に
戸惑う。そして偶然に入った甘味処。店内の違和感に気づく。
突然、二人は思わぬ場面に遭遇。まるでサスペンス劇場!
<巻末>食堂のおばちゃんのワンポイントアドバイス・・・レシピ。
優しい心遣いが味付けになる大衆食堂での、人情話短編集。
今回は、季節の行事に纏わる物語が中心。
新しい常連たちを交えながらも、変わらぬ店の雰囲気。
調理の様子、食べる人々の表情までも浮かび上がるような、
美味しさ溢れる描写は、相変わらず食欲を誘う。
だが、季節の移ろいと同時に語られるのは、時代の変化。
歩く街、生活、そして味。長い時代の流れの中、人にも店にも
運命がある。それは理不尽で予想のつかないものかもしれない。
一子も80歳代半ばになり、老いを今更ながらに感じている。
でも、はじめ食堂はここにある。若頭の万里の成長も著しい。
そう万里君。
味の追求だけでなく、人としても格段に成長しています。
彼に導かれるように常連になった、ニューハーフの三人も素敵♪
- 感想投稿日 : 2022年8月6日
- 読了日 : 2022年8月6日
- 本棚登録日 : 2022年7月30日
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