食堂のおばちゃんシリーズ5冊目。
姑の一子と嫁の二三が切り盛りする、はじめ食堂。
夏から冬への季節の移ろいの中で人間模様が繰り広げられる。
この定食屋兼居酒屋での人情話を味わう短編集。
第一話 真夏の焼きそば・・・夏の日替わりの麺料理の考案から、
万里の閃きでワンコインメニューとテイクアウトが始まる。
それから毎日、時間差で来る二人の客。その正体は?
第二話 禁断のチーズ和え・・・残暑の9月、要の紹介で来店の
作家とイラストレーター。見つめる視線の語る、想い。
第三話 初めてのハラール・・・10月、初のムスリムの客が来店。
瑠美が招いた客も。ハラール料理は新しい時代の文化交流。
第四話 過ぎし日のカブラ蒸し・・・晩秋の11月、落ち込んだ瑠美を
癒すのは、はじめ食堂で出された自分のレシピ。そして、
カブラ蒸しを味わう少女は一子に語る。それは思わぬ縁。
第五話 気の強い小鍋立て・・・12月の小鍋立てで賑わう店。
調理師試験を受験することになった万里は、生活設計を語る
はなの言葉から、自分の本当にやりたいことは何か、
それがわからない自分に気づかされる。それは成長。
<巻末>食堂のおばちゃんのワンポイントアドバイス・・・レシピ。
優しい心遣いが味付けになる大衆食堂での、人情話短編集。
ハラールへの柔軟な考え、万里や常連客の提案や意見を
ないがしろにしない一子と二三の姿も、変わらずに良い。
そして、調理のシーンと食卓を彩る料理の姿は、これまた
美味しそうで、読後に食べたくなって困ってしまう。
日に日に腕を上げ、アイデアを提示する万里ですが、
はなの力強い言葉から、自分の将来を考え始めるように。
人の縁をも見出し結びつける、はじめ食堂の存在、しみじみです。
祖母の思い出を語る玲那と一子の縁。
はなと万里もムスリムの客での縁。
ハードボイルド作家の阿木と瑠美の今後は?
チームはじめ食堂の先行きも気になるところ。
- 感想投稿日 : 2022年9月11日
- 読了日 : 2022年9月11日
- 本棚登録日 : 2022年9月1日
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