ことばの履歴 (岩波新書 新赤版 188)

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  • 岩波書店 (1991年9月20日発売)
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最近今野真二さんの『消された漱石』という本を読んでいて、その中で漱石の使った「三馬」は決して漱石の編み出した当て字ではなく、江戸時代からの用法であることを山田俊雄さんが『詞林逍遙』の中で述べているとあったので、急に山田さんの本が読みたくなったが、買ってあったのは本書と『詞林閑話』だった。以前は拾い読みをしてもそんなに感動はしなかったが、今回読んでみて、一つ一つの話は短いものの、どれも蘊蓄が深く、考えさせられるものが多かった。その文体は決して易しいとはいえず、時に難解ではあるが、どれも味わい深い。たとえば、「停車場」は、ていしゃじょう、あるいはていしゃばと読まれており、当時「駅」はまだ宿場、駅馬車の駅のような意味だったとか、「町人」は現代ではちょうにんとしか読まないが、かつては「まちにん、まちうど」のような読みがあったとか、「粉薬」はかつては「こぐすり」と読んでいたとか(これはぼくも記憶がある)、言語の変化に対するするどい観察が全書を通して見られる。ぼくも、毎月辞書について書いているが、こんな味わい深い文を書けるようになりたいものだと思った。本書を読むのと平行して、山田さんの著書をまとめて買ってしまった。

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感想投稿日 : 2011年11月15日
本棚登録日 : 2011年11月15日

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