創氏改名: 日本の朝鮮支配の中で (岩波新書 新赤版 1118)

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  • 岩波書店 (2008年3月19日発売)
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 朝鮮は中国と同じく、本来夫婦別姓の国である。創氏改名についての誤解を明らかにした本として、金英達、宮田節子氏らの研究があるが、どうも、研究書としては金氏らの専門書があるだけらしい。金氏らの著でわかった大事なこと、創氏改名が朝鮮人の名前を変えた、奪ったというより、日本の家族制度に合わせ家の氏を夫婦ともに名乗らせようとしたことだ。届け出をしなかった場合、もとの姓を名乗ってもいいのである。ただし、重要なのは、その場合も、妻は日本と同じく夫の姓に変えざるを得なかったのである。つまり、男の金氏と女の朴氏は本来結婚しても姓を変えないのだが、これを男の氏に一致させようとしたのである。日本の家族制度の導入である。もっとも、警察をはじめ当時の人々の中には、日本人との同一化を警戒する動きもあった。いっしょにしてしまうと不都合もあるのである。この点を明らかにしたのも本書の功績である。創氏改名でもう一つよくいわれるのは、「強制でなかった」という点だが、本書の功績はこれまで見ることのできなかった資料から、強制の実態を明らかにしたことである。氏のことばでいえば、それは「自発性の強要」であった。自発性論者はこれでぐうの音もでないはずなのだが。

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感想投稿日 : 2008年4月23日
本棚登録日 : 2008年4月23日

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