偶然、津田さんの『百歳までの読書』と同時にこの本を買った。津田さんは編集者で、それだけ『暮らしの手帖』の編集長を長年やった花森さんの生涯は魅力的であったのだろう。それでも、津田さんは花森さんのような編集長にはついていけないともらしている。それだけ花森さんという人は個性が強く、人をぐいぐい引っ張っていく人だったのだろう。本書はその花森さんがいかにして戦後の日本人の暮らしを変えた男となったのかと言う話。花森さんといえば、その相棒だった大橋鎮子さんとの二人三脚が有名だが、本書では鎮子さんのはなしはあまり出てこない。それより、花森さんが松江の金持ちの娘であったももよさんに求愛し、その後もらぶらぶだった様子が描いてあってほほえましく思った。本書での圧巻はやはり『暮らしの手帖』でさまざまな商品テストをしたくだりであろう。かれらの事務所が出版社でなく研究所であったわけもわかるというものだ。このテスト、本当に徹底している。スポンサーからびた一文もらわずやるわけで、同じものをいくつも買い込んだり、パン焼き器のテストでは天井までつみあがるほどのパンを焼いて実験したり、ストーブでは初期消火には水が効果的であると主張し、消防局とぶつかった話とか。戦後の人々の消費生活が大きく進歩したのは、まさにこの雑誌が引き金になったことがわかる。
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- 感想投稿日 : 2016年6月29日
- 本棚登録日 : 2016年6月29日
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