どこまでも無垢で――救いようもなく冷たい笑みだった。
「――生きていることに耐えられなくなった時、人は死ぬのが怖いなんて思わないんだろうね」
内容紹介です。
何かと問題の多い院生・魚住とどうもその面倒を見てしまう会社員・久留米は、お互いの気持ちが友人以上のものになりつつあるのになかなかそれを認められない。中途半端な関係が続くある日、自殺した心理カウンセラーの弟という男が現れ酷似するその兄弟の容貌に魚住は激しく動揺する。シリーズ第2弾!!
魚住を取り巻く世界は透明な気がします。
それはもしかしたら、魚住自身がその世界にいないから、なのかもしれません。
澄んでいるだけの水では魚は生きられないと思うんですよね。
それは人も同じで、嫌いな人がいて、憎むことがあって、傷つけられることがあって、傷つけることがあって。
そうやって日々を過ごさないと、人は生きていけない。
透明なだけでは、それは死とどこが違うのだろう?
だからこそ上記の魚住の言葉に驚きました。
だって、魚住にとって死はいつだって傍にあるものだったはずなんです。
鈍化することによって、自分を守ってきた彼は、『死』を怖いものだとは認識していなかったはず。
生きていることに耐えられない。そんな風に思えるほど、生きるということに執着していないのに。
それでも『死』と近しいが故に、悟ってしまう。悟らざるにはいられない。
そういうことなんでしょうか。
この話で元々好きだったんですが、マリちゃんがさらに好きになりました。
いつか、こんな風に胸を張って『自分』というものを主張出来たらいいなぁ。
ま、私なんてまだまだ修行が足りませんけれど。
過去があまりに辛いことの連続だった魚住ですが、なぜか、彼の周りは優しい。
彼の周りにいる人たちが、いろんな傷を抱えながらお互いを思いやっているからなのかもしれません。
やはり、人が優しくなるためには傷つくことが必要なのかもしれない。
- 感想投稿日 : 2011年1月23日
- 読了日 : 2011年1月23日
- 本棚登録日 : 2011年1月23日
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