ドイツ帝国の興亡: ビスマルクからヒトラーへ

  • 平凡社 (1989年2月1日発売)
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はるか中世の「第一帝国」こと神聖ローマ帝国はひとまず措いても、ドイツの歴史、ことに近代史には見通しの悪さが付きまとう。

啓蒙君主にして軍国主義者のフリードリヒ2世が躍進させたプロイセン。鉄血宰相ビスマルクが辣腕を振るった後、ヴィルヘルム2世親政と第一次世界大戦によって滅んだ「第二帝国」。そしてユダヤ民族フォビアの殺人鬼ヒトラーが率いた「第三帝国」ことナチスドイツ。
この3つの有名な歴史的国家の間の、有機的なつながりをきちんと追えている人がどれだけいるだろうか?

そのいわばミッシング・リンクを、見事に埋めてくれるのがこの「ドイツ帝国の興亡 ビスマルクからヒトラーへ」です。
こんな本はなかなかないんじゃないかな。
ただ東西ドイツ分立時代に書かれた本であることから記述が今となっては古いのと、翻訳の日本語が…筆力は十二分にあるもののちょっと校正不足というか、ところどころに文意の取りづらい部分があるのとが惜しいところ。

著者のハフナーさんはナチスドイツの興隆を目の当たりに見た世代の人だけにもうこの世の人ではないけど、この本のコンセプトを継いだ読みやすいドイツ近代通史の需要は消えることはないと思う。そして第二次世界大戦という黒歴史を共有する国だけに、日本人としても学ばされる部分はたいへん多い。
新たに優れた類書の登場を願ってやみません。お薦め。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 活字本
感想投稿日 : 2020年5月31日
読了日 : 2020年5月30日
本棚登録日 : 2020年1月2日

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