人のセックスを笑うな (河出文庫 や 17-1)

  • 河出書房新社 (2006年10月5日発売)
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感想 : 801
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あっという間に読み終えた。短い。
好き嫌いが分かれる作品だと思った。
私は好きだけど。
19歳のみるめ(専門学校生)と39歳のユリ(専門学校講師・夫あり)の恋愛で、驚くべきことにユリから「あのさあ、私君のこと好きなんだよ」と告白して始まった恋愛だった。

この作品が無理な人は、とにかく現実感がなくフラフラとしているからかなーと予想する。
特にユリのフラフラ具合と言ったらない。
美人でもなく、年相応の見た目。
家事は苦手で部屋は散らかっている。
絵は描くが特段上手いわけではない。
自信がなく、仕事や人生について悩んでいる様子。しかも夫がありながら自分の教え子に告白。
こんな39歳さすがに大丈夫?と心配になる

しかし作品の言いたい事はそこじゃない気がする。
みるめはこの人の美しくないところが大好き。
美しくないところこそ愛おしいって、究極の恋愛感情じゃないかと思う。

【うなじ。寝転がって後ろから触るのがとても楽しかった。真っ黒な剛毛。透き通る白い毛。半分までは黒い毛。混じり合っているところを何度も触った。
上に手櫛ですかしあげると、どうやって髪が生えているのか丸わかり。あんなに愛おしいものはなかった。】
自分の若かりし頃の恋愛を思い出して唇を噛む。涙が出るほどの好き、という感情が心に染みる。

こういう気持ちはきっと心の中の一番奥の、無防備な場所にあるんだ。
だから2人でただじゃれ合っているだけの時間は2人だけのものだし、セックスは下手でも上手くてもいいし、誰かに見られたり詮索されたり、ましてや笑われたりされては絶対にいけない。見ていいとしたら神様くらい。
タイトルはそういう意味だと思う。

終わってしまう恋愛もあるけど、そういう時間って宝物だよね、ずっと大事にしたいね、って事が言いたいんじゃないかなぁ。

私も夫にそういう感情を抱いた事があって、若かったけど、幸せな経験をしたなぁとしみじみ思ったのでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年7月19日
読了日 : 2020年7月19日
本棚登録日 : 2020年5月23日

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