これを読むとかぼちゃのパイを食べたくなるのです。
数年前に図書館で出会った本。初版は1972年ということなので、子どものときに出会っていてもおかしくはないけれど、読んだ記憶がなかった。(早くに絶版になったとのことだったので、たぶん読んではいなかったのだと思う)
イラストが増え新装版になったという本をはじめて読んだ時、どこにも泣く要素がなかったのに、号泣した覚えがある。(今でも読み返すたびにちょっとじんわりくる)
それはたぶん、ふとっちょのおばさんがやさしくて、すてきな大人だったからだ。何の種かわからない種をまいて、ある人には「あさがおですよ」、ある人には「すいかですよ」と言われて「どっちだろう。どっちにしてもたのしみだ。たねをまくのはいいことだ」とたのしみにする。たねは結局かぼちゃだったけれど、「でも、おばさんは、すこしもがっかりしませんでした」というところが素敵。
これって子育てと一緒でしょう。人生と一緒でしょう。どんな可能性も楽しみで、結局思っていなかったようにならなくても「がっかりしない」。すてきなことだと思う。
さらに、大人の都合に振り回されてぐったりしてしまった王子さまにのびのびあそび、食べることの楽しさをユーモアたっぷりに教えるところもいい。「みしのたくかにと」が素敵な呪文に思えてくる。
こんなにも、心揺さぶられるのは、こんな大人に子どもの頃に会いたかった、という気持ちになるからかもしれない。今の子どもたちの周りにおばさんのような大人がいてくれたらいい、と願うからかもしれない。そして、ひとりでさみしい子がいたらこの本を読んで元気になってもらいたい。「みしのたくかにと」って呪文をとなえてごらん、きっと元気になれるよって教えてあげたい。そう思う。
- 感想投稿日 : 2011年5月5日
- 読了日 : 2011年5月5日
- 本棚登録日 : 2011年5月5日
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