何と素朴で優しい人だろう・・・とこれを読んで思いました。
この物語の主人公で語り部の母のことです。
その母とは小説家、小林多喜二さんの母、セキさんのこと。
13歳で農家に嫁ぎ、その後主婦として母として、ただただ愚直に正しい道を生きた女性の追想からなる物語。
母の口から語られる小林多喜二は親孝行で働き者、正しい心根をもち、誰よりも強い意志をもつ人でした。
常に社会的に恵まれない人の立場に立ち、小説を書いた。
そしてそれが元で命をなくしてしまった。
あまりにも無残な拷問という形で-。
それを見た母のあまりの衝撃。
それを思うと胸がつまります。
親孝行な息子だけど、最後にはとんでもない親不孝をしてしまった。
正しい道を選んだが故に。
それがとても悲しい。
セキさんは13歳で嫁ぎ貧乏な中、苦労をしてきた女性ですが、それでも自分よりも恵まれない人への愛情をもっているというのが素晴らしいと思いました。
だからこそ、小林多喜二のような思想をもった息子が育ったのだと思う。
文字の読み書きができない事を恥じ、こんな母親は息子に何もしてやれんと思う場面がありますが、それよりもずっとずっと人間として大切なものをこの人はもっている。
だけどそんな人もあまりにもむごい息子の死に神を呪います。
しかし、それがやがて信仰の道へ進むきっかけとなるのです。
世の中って、何がきっかけになり、どうなるか分からない。
今の時代に、ただシンプルに単純に素朴に生きることは難しい。
だからこそ、同じ女性としてセキさんに憧れ、こんな風に生きたいと思いました。
- 感想投稿日 : 2013年7月13日
- 読了日 : 2012年4月25日
- 本棚登録日 : 2013年7月13日
みんなの感想をみる