芝桜 (下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1979年10月25日発売)
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本棚登録 : 217
感想 : 22
4

上巻の最後で惚れぬいた男と別れ、その原因を作った蔦代ととうとう袂を分かつ正子。
その後、偶然出会った馴染み客と思いがけず結婚する事となり、ずっと面倒をみてくれた旦那と別れる事となる。
さらに、夫との短い結婚生活を経て宿屋の女将として落ち着いた矢先、またも蔦代絡みの話が持ち込まれ、二度と会わないと心に決めていた蔦代と会うはめに・・・。
以前の置屋を買い取り、今はさらに大きな待合「九重」の経営者となっている蔦代。
再会した最初は蟠りのあった正子だが、何となくなし崩し的に蔦代との交友が復活。
時代が戦前、戦中、戦後と激動の時を駆け抜け、移り変わっていく最中、正子と蔦代は一時同じ屋根の下で暮らす事に。
その間、正子は身元のはっきりしない馴染み客と深い仲になったり、色々ありながら宿屋の方は繁盛し続ける。
蔦代の方も「九重」を再開させ、とうとう二人は別々の道を歩き始める事となる。

ラストのシーンが素敵です。
しみじみと余韻の残る最後でした。

下巻では上巻よりもさらに悪どさを増した感じで蔦代が登場。
怖い女となっています。
正子も雛妓の頃とは違い、そんな蔦代を警戒し、好きな男が出来たことも絶対悟られまいとするのですが、蔦代には何故か全てがお見通しとなってしまう。
そして、悪女なのにふとした時に見せるみみっちさとか人間臭さを可愛いと思ってしまい憎めない。
真っ直ぐ生きる人間はこういう人間にはある意味かなわないんだ・・・と見ていて思います。
一方、蔦代の方も正子を利用するだけ利用して陥れるという風でなく、根底にはやはり正子が好きで徹底的に嫌われたくないという気持ちがある。
それが不思議な気がしますが、もしかしたら正子が蔦代にかなわないと同じように、蔦代も正子にはかなわない思いを抱いていて、それが妬みを通り越した憧れになっているのではないか?と思いました。
だからこそ、お互い離れられない。
こういうのを正に腐れ縁というんだろうな、と思います。

芝桜を置屋の庭に植えた二人も下巻の最後は40代。
そして、最後の章は「かぼちゃの花」となっているのが何とも、言いえて妙という気がしました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 有吉佐和子
感想投稿日 : 2013年7月5日
読了日 : 2013年4月1日
本棚登録日 : 2013年7月5日

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