他人同士 (新潮文庫 あ 7-17)

著者 :
  • 新潮社 (1993年1月1日発売)
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本棚登録 : 126
感想 : 10
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何も残らない本って、私の中で2種類あります。
もう読んでいられないくらいひどいものと読んでいる時は面白いんだけど、読み終わったらすっかり忘れてしまうもの。
この本は後の方の残らない本です。
いつも深い内容の本ばかり読んでいると自分の中に色々たまってしまって疲れるので、こういう本も時にいいと思います。
久しぶりに読み終えた所、全く何も覚えてなかったんですが、でも読んでいる時はそれなりに楽しんで読める本です。

親から引き継いだ資産をもつサラリーマン。
資産目当ての女性に結婚を迫られ、別の女性に相談した所、実はその女性の方がたちの悪い女で、言われるままに結婚してしまう。
その後彼は、自分の好みの優しい雰囲気の女性と出会うが-。(粘土の女)

多分前に読んだ時は、次々とたちの悪い女性に出会う主人公の男性はツイてないなという感想をもったと思いますが、今読み返したらこれは仕方ないだろうという気がしました。
彼の人を見る目のなさが次々に不幸をまき起こすのだと思いました。

人口のダム湖がある山里の宿に泊まった主人公。
その宿の主人は以前、ダム湖に沈む公衆電話で人が亡くなったが、それは実は事故でなく殺人だったという話を始める。(湖の底)

何となくラストは想像がつきましたが、それでも楽しめました。

行きつけの喫茶店のウェイトレスの女性二人に出張土産をそれぞれ渡した所、その土産がきっかけとなり、二人の女性のその後の人生が大きく変わってしまう。
一人の女性はその土産がきっかけで事故にあい、もう一人の女性は結婚相手の男性と出会った。(手袋とスカーフ)

幸せと不幸せは背中合わせ。
運命が変わったと思ってもそれはあらかじめ決められたものだったのかもしれない-。
そんな事をさらっと描いた話です。

ちょっとブラック味とシャレのきいた10話の短編集です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 阿刀田高
感想投稿日 : 2013年7月20日
読了日 : 2011年10月17日
本棚登録日 : 2013年7月20日

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