私たちが好きだったこと (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1998年11月30日発売)
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本棚登録 : 1216
感想 : 117
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読み始めて「あれ?これってエッセイじゃないんだ・・・」と思いました。
だって、宮本輝さんの本で一人称・・・私で書かれているのって珍しい。
そして読み終えて、このタイトル「好きだった」と過去形なんだ・・・と思いました。

ひょんな事から同居する事となった4人の若い男女の様子を描いた話です。
高い倍率の公団住宅に幸運に当選した私-与志。
所が、その公団住宅に入居するには同居者が必要だった。
そんな訳で、与志はカメラマンの友達、佐竹-通称ロバちゃんと一緒に暮らす事にする。
そして、その日たまたまバーで出会った女性二人組ともなりゆきで一緒に暮らす事になる。

サラリーマンで、将来は独立して自分の事務所をもつのが夢の与志。
カメラマンのロバちゃん。
美容師の曜子。
会社員で不安神経症を抱える愛子。

まもなく、与志と愛子、ロバと曜子という組み合わせの二つのカップルが誕生する。
そして、美容院の金を使い込んだ曜子のため、医師を目指す愛子のため、ロバちゃんが交通事故の際に知り合った10代の男女のため、4人は借金を抱える事となる。

宮本輝さんの書くヒロインは大体において、いくつかの共通点があります。
それは美女で賢くて清潔感があって、潔癖で、そして自分が悪い時も決して謝らないという特徴。
この物語のヒロインは正にその通りでしたが、「こんな女性が潔癖だなんて私は認めない!」と読んでいてムカムカきました。
もう一人の女性、曜子もすごく勝手で人の気持ちを考えない言動をしている。
けれど、この物語では「優しい」という設定。
これが作者の女性観なんだろうな・・・。
それに逆らう気はないけど「潔癖な女性」「本当に優しい女性」ってこんなもんじゃないだろう~と私は思います。

ただ、その本人のしている事が清潔でなくても、潔癖でなくても、そういう雰囲気を漂わせていたら周囲はそのように扱うというのはあると思う。
同じように、「人のために生きる」「自分の事より人の幸せを考える」という事に徹した主人公たちの2年間という年月はそういう雰囲気を彼らに漂わせたのではないか?と思いました。
だからこそ、物語の後半に主人公が旅行した際のエピソードが生まれたのだろうな・・・と。

この作者の本にしてはストーリー展開はかなりお手軽だし、どうしても主要登場人物の女性たちが気に入らなくて、好きになれない話でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 真梨幸子
感想投稿日 : 2013年7月9日
読了日 : 2012年8月18日
本棚登録日 : 2013年7月9日

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