女神 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社 (2006年9月7日発売)
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感想 : 54
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同僚で営業職の沙和子に憧れるOLの真澄。
営業成績はトップクラスなのにガツガツした所がなく、いつも優雅な笑みを口元に浮かべる沙和子。
仕事が出来てセンスもよく美人という完璧な女性。
そんな彼女が時折顔を曇らせるのに気づいた真澄はその訳が知りたいと思い、同じアパートに住む友人と彼女の事を探り始める。
そして見えてきた沙和子の真実の姿は思ったものよりもずっとどす黒く根の深いものだった。
それと別に、失踪した20代の青年の両親からも彼女の姿が明らかになっていく。

沙和子の正体を知ってからの真澄と友人、二人の女性の行動や心の動きが意外。
典型にあてはまってなくていいと思いました。
普通なら何故?と理解できない所ですが、この話では何となく理解できました。
沙和子ほどでないにしろ、二人の女性も精神的に危うい部分をもっている。
だから自分たちは上りつめられない所までとことんやっている沙和子に共鳴できたのだと思う。

周囲も、そして本人も自分は完璧だと思っている。
完璧な100%の自分からそうでない行動や容姿を差し引いていく彼女。
それって痛い・・・。
ややこしいけど、自分は完璧だと思っている時点でその人は完璧じゃないのだと思う。
だから完璧に見せようとすればするほど綻びが見える。
自分の思い描く100%はいつも予想内の中だけだから不測の事態には対応できない。
確かに彼女は人間的感情のない恐い女性だけど、その辺も兼ね合わせて痛く悲しい人だと思いました。
ただ沙和子が何故そうまでして完璧であろうとするのか、そのために不都合なものを次々排除していくのか、その原因を知ってからは彼女の進む方向性がちょっと違うような・・・迷走している感じがしました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 明野照葉
感想投稿日 : 2013年7月15日
読了日 : 2012年3月2日
本棚登録日 : 2013年7月15日

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