京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男

著者 :
  • 西日本出版社 (2020年7月14日発売)
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本棚登録 : 212
感想 : 38
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京都を舞台としたミステリーを描く女流作家、山村美紗の半生を描いた本。
これを読むと波乱万丈の人生を送った人だったんだなぁ・・・と思った。
もともとは裕福な家に生まれながら戦時中は貧しい暮らしも経験し、結婚して投資で成功、そして小説家を目指す。
華やかでワガママ、正に女王のような人と見られていたが、その影では自信の無さや気遣いがある人だった。
そして、いつも男性にもてていた。
相当に魅力のある人だったんだろうな・・・とこれを読んで思った。

私はこの本のタイトルと作者が花房観音さんという事から官能的な部分もある本なんだろうな・・・と想像していたら全くそうではなく、淡々とした印象の本だった。
正直、物足りなかった。
ノンフィクション作家の書いたこういう本は事務的にあった事を書いていたとしても何故か面白い。
読者が何を知りたいかを心得て、好奇心を少しずつ満たした書き方をしているから。
私が小説家がノンフィクション小説を書く時に求めるのは小説家ならではの書きもの、しかもその作家の色が出ているものなので、それで言うとこれは違うな・・・と感じた。
まあ、どうしたってまだ当事者がご存命なだけに書きづらいというのは分かるし、それが伝わってくる内容だった。
だけど、相当細かい所まで山村美紗という女性について調べて取材もしているのは読んでいて分かった。

私は以前、テレビで山村美紗は結婚しているものの、隣に西村京太郎が住んでいて家が渡り廊下でつながっていて行き来していたというのを聞いた事がある。
長女の山村紅葉のインタビューだったかも。
今も覚えてるくらいなので、変わってるな・・・と思って記憶してたんだろうと思う。

結局の所、西村京太郎とつきあっていたのか、夫と関係はどうか分からないけど、結果を見たら想像ができる。
山村美紗が亡くなって再婚してからも夫は美紗の絵を描いて個展まで開いている。
それを見るだけで夫婦の強いつながり、絆というのがあったのだと分かる。
ただ、影に徹するだけでそこまでこよなく相手を愛するとはならない。
そして、西村京太郎が自分と山村美紗の事を男女の関係があったとして書いた小説、その後の訂正の弁を見ると、どれだけ彼が彼女を愛していたか、複雑な気持ちを抱いていたかが分かる。
結局、男女のこと、夫婦のことは、よく言う事だけど当事者にしか分からない。

そういう分からない男女の仲というのに気遣いしながら、相当な覚悟をもって書いた本だというのが後半の文章からひしひしと伝わってきた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年12月23日
読了日 : 2020年12月23日
本棚登録日 : 2020年12月23日

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