ローマ人の物語〈10〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(下) (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2004年8月30日発売)
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ポンペイウスの活躍のおかげで、それまでの最大版図を支配するようになったローマ。軍の司令官としては優秀で民衆からも高い支持を得ていたポンペイウスだが政治には関心がなく、再び元老院支配が強まる。弁論の祖とも言われるキケロが活躍した時代。のちの英雄である若きカエサルはしばらく雌伏の時を過ごすわけだが、内乱によって命を狙われたり、借金して人妻をたぶらかしたり、海賊に囚われたかと思うと身代金の値段を自ら跳ね上げたりと、荒唐無稽・破天荒な青年期を過ごす。敵方の衰退によりやっとローマに戻ってからは、それまでとは別人のように、ただし慎重に頭角を表す。ここまでが8巻。元老院を抑えて実権を握ってからは、歴史でも有名な三頭政治を実現し、自らはガリアの平定に赴く。このガリア戦記が9巻と10巻。ガリア戦記はそれだけで書籍になっているし、それを題材にした様々なファンタジー小説や映画にもなっている。カエサルの将としての才覚が遺憾無く発揮され、現在の西ヨーロッパの原型ともいうべき町や街道が作られる。その時の街の名前が、2000年を経た今でも残っているというのは、先見の明というだけでは足りない神がかりな大事業。この後、元老院との対立が深まり、いよいよルビコン川を渡ることになる。ローマの長い歴史の中でも、一つのクライマックスを迎えることになる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年7月9日
読了日 : 2023年7月9日
本棚登録日 : 2023年5月28日

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