ホテルにはニューヨークの広告マンが九十七人泊まっていて、長距離回線を独占しているものだから、五○七号室の女の子は電話がつながるまで正午から二時間半近く待たねばならなかった。でもそのあいだの時間はしっかり活用した。ポケットサイズの女性誌で「セックスは楽しいーそれとも地獄?」と題した記事を読んだし、櫛とブラシも洗った。ベージュのスカートについた染みも抜いた。サックスで買ったブラウスのボタンの位置を変え、ほくろに新たに出現した毛二本も抜いた。オペレーターがやっと電話してきたとき、女の子は窓際の作りつけの椅子に座って、左手の爪にマニキュアをほぼ塗り終えたところだった。
読書状況:読み終わった
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930|エイベイブンガク
- 感想投稿日 : 2011年9月20日
- 読了日 : 2011年9月20日
- 本棚登録日 : 2011年9月20日
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