ヤクザの実戦心理術: なぜ彼らの言いなりになってしまうのか (ワニ文庫 P- 72)

著者 :
  • ベストセラーズ (2003年9月1日発売)
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 著者の向谷さんは「交渉」「かきひき」特にアウトロー的なそれについての著書が多いが、最近では何か悟ったことを伺わせるものも多くその見識の広さには頭が下がる。本書はスタンダードな向谷さんらしい内容。

 著者本人も意識しているが「ヤクザの・・・」として論じているものの、取り上げている多くの事例と実生活の体験とを比べてみれば似たような「言い回し」で他人をコントロールしている気質の人も多いことがわかる。したがって、本書で書かれているようなシチュエーションは特殊な世界で行われているものではなく、ごくごくありがちな日常なのだ。

 本書で提示されている多くの手法は、極端に言えば今の世の中を生きる上で「必要不可欠」のものではないかと思う。こうした考えは「生きるためにはルールギリギリの方法論が不可欠」という強かな姿勢を示すものであるが、その具体的方法を実践しないまでもある程度意識した行動をしないと世間の厳しさをモロに味わうこととなる。もし実践すれば当然周囲から「温かい目」で扱われることにはならないし、相手を疑えば「感じ悪い」印象を与えてしまうかもしれない。しかし、相手の出方に対応するための「定石」を取らなければその場で終了という事態も覚悟しなければならないことを考えれば、ある程度の「構え」は修得しておきたいものである。

 「喧嘩をその場の勝敗で考えるのではなく長期スパンで考える」「相手に〜よりはマシと納得させる」「ライオンに肉を与えれば大人しくなるどころか死ぬまで肉を求め続ける」などのテーゼを頭の片隅に置いておくだけでも余裕を持った行動に繋がるはずである。少なくとも、常套句「手間は取らせない」「大丈夫」「ちょっと」といった言葉に少しでも疑いを持つようにしておくことは他人と接するうえで大きな意義があると思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年11月19日
読了日 : 2014年11月19日
本棚登録日 : 2014年11月19日

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