海の見える理髪店

著者 :
  • 集英社 (2016年3月25日発売)
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表題作
わけあって、海沿いで理容店を営む店主。生き別れた年頃の息子は名を伏せ理容師の父の元へ客として訪れる。
店主の目線で話は綴られている。息子の心情に触れるところがない。
はじめは、あまりにも饒舌な店主に違和感を覚えた。いつ息子と分かったのだろう。最後のほうで「原田様のお若い声の予約が嬉しくて」とあるから、たぶんそこで。
自分の半生を息子に聞かせる(聞いてもらう)つもりで、意を決したように感じた。人を殺めてしまった過去がある店主は一生父と息子として会うことはないだろう。
赤い錆びれたブランコの所は切なかった。思わず表紙を見たら裏表紙にはブランコの上から半分のイラストにあった。ああやっぱり、と思った。
そこで私は、無性に小さい頃の思い出の品が頭に浮かんだ。母がミシンで作ってくれた、母とお揃いの洋服。黒地に小花模様、母はツーピース私はワンピース。今も、どこかにあるだろうか。見たら一瞬で泣ける。なんでだろう。そんな気持ちにさせてもらった。
親子にも色々ある。

いつか来た道
好みだったのはこれ。
母と娘のお話。母から価値観を押し付けられ、ずっと呪縛で苦しみ続けてきた。
だか長いことぶりに訪れた母は認知症にかかっていた。
杏子は絶対に言わない言葉を言う。
「また来るから」と。
親が病んで衰えてわだかまりが解けてゆく。親子とはこういうものかな。

空は今日もスカイ
読めど読めど、活字としてしか頭に入ってこなくて、挫折しかけた。ふわふわして付いてゆけなかった。今、少々疲れてるので頭が働かない(私の読書力不足)。

成人式
両親の気持ちは分からないでもない(同じ状況ではないのでなんとも言い切れないが)。
辛い場所には立ち寄りたくない(見たくもなくなる)私…なので、理解し難い感があった。
しかし、最後は前向きにという気持ちは同じ。

全体的に、思っていたイメージと違った…。
タイトルと装丁の印象から、癒され系(私の思う)と想像していたが、けっこう鋭かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年10月6日
読了日 : 2020年10月5日
本棚登録日 : 2020年6月10日

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