人のセックスを笑うな (河出文庫 や 17-1)

  • 河出書房新社 (2006年10月5日発売)
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感想 : 801
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面白かった。すーっと読みやすくて、それでいて奥が深く、しばらく心がじんわりして止まなかった。
美術の専門学校講師ユリ。自分の気持ち優先に自由奔放、無邪気(わるく言えば自己中心的にも見える)に生きている。夫ある身で、教え子(20も年下)男子、「みるめ」にアプローチし、恋が始まる。
感じたことが、そのまま解説に。読みやすく、文章のセンスがよく(私がいうなど僭越すぎるがそう思った)、面白く、楽しい。
「みるめ」を通した視点、一人称で描かれていて、よけいに「みるめ」の心情が痛く響いてくる。

飲み会のあと、飲み会では一度も口を利かなかったのに、
「JRでしょう?」
と、その日初めてオレに話しかけた。

きっとそういう会話から(恋は)始まる。些細な言葉かけから(と、遠い目をしてしまう)。ドキドキしました。

どこか成就しない恋だと思っていた「みるめ」かもしれないが、別れはやってきた。

気になったところがあった。
「ユリの世代は、オレの世代よりも安定した時代に青春を過ごした世代なんじゃないだろうか。甘さや弱さが見える。」
とある。
20も年下の「みるめ」のからそう見えていたのか。
ユリの世代は自分(私)と重なりそうで、痛いところを付かれた思い。

ラストのここが心痛かった。
「オレには彼女がおばあちゃんになったときの顔はわからないんだな。でも、最後に会ったときのユリの笑顔は、残っていくんだな。」
こういう別れ方、考え方やり切れない、せつない。
映画もあるとのことですが、小説のほうがいいのでは(と私はおもった!)
息子の本棚にあった(でなきゃ読む機会もなかっただろう、タイトルに躊躇していたので)、読んでよかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年12月24日
読了日 : 2020年12月24日
本棚登録日 : 2020年12月24日

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